桂由美さんは世界的ウェディングドレスデザイナーとして毎年パリコレにも参加しておられます。あまり知られていませんが、世界広しと言えどもウェディングドレスを専門としているデザイナーは桂由美さんだけなのです。その昔、日本の結婚式は和装が97%でウェディングドレスは3%でしたが、現在はほとんどの花嫁がウェディングドレスを着ています。この逆転現象の立役者こそ桂由美さんなのです。
私が桂由美さんと出会ったのは、ファッションモデルの友達との待ち合わせ場所に、乃木坂の桂由美ブライダルハウスのカフェを指定された時のことでした。ショーウィンドーに並んでいるYumi Katsuraブランドのドレスはどれも息を呑むほど美しく、一つ一つが芸術作品として成立していました。「これが世界最高峰のウェディングドレスなんだ」と思いました。
私は知人友人のウェディングムービーを数多く制作していましたので数多くウェディングドレスを見て来ましたが、今まで見て来たドレスとは確かにレベルが違いました。
カフェで桂由美さんの右腕的存在のアクセサリーデザイナーさんとお話しさせていただきました。そこで聞いたことは、桂由美さんは単にドレスのデザインをするだけではなく、結婚式全体の演出をしておられるとのことでした。例えば途中でお色直しをして色彩鮮やかなドレスで再登場する演出は海外では見られない日本特有の文化で、これも桂由美さんが広められたとのことでした。高度経済成長の波に乗り常に日本のウェディング文化とウェディング産業を牽引されて来た第一人者こそ桂由美さんだったのです。
その日は興奮してなかなか眠れませんでした。後に私は一人で桂由美ブライダルハウスへ行き、「私に桂由美さんのドキュメンタリー映画を作らせてください」とお願いしました。桂由美さんは私の申し出を快く受けてくださいました。それから1年間、桂由美さんについて回り数々のファッションショーや結婚式を撮影しました。私にとって桂由美さんとの日々は、結婚式の意味、ドレス作りの奥深さ、日本独特のブライダルを学ぶ機会となりました。そして何より桂由美さんのブライダルに対する情熱に心を打たれました。

こうして完成した映画は2014年に『桂由美マザーオブザブライド』というタイトルで渋谷のアップリンクという映画館で劇場公開されました。
それからの私は、私の知らない人からも結婚式撮影の依頼が増えゆき、現在の職業へ繋がっていったのです。今の私があるのは桂由美さんのおかげです。桂由美さんが私に教えてくれたことはたくさんありますが、私がいつも心の真ん中に置いている言葉があります。それは「すべては花嫁のために」です。この言葉で私の迷いはひとつもなくなりました。私は桂由美さんを心から尊敬しています。